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モータドライバ

モータドライバは面倒ですが,ロボコンには必須の回路です.数万円のモータドライバを買ってくる手もありますが,お金もかかるし,そもそもロボコンのロボットは自分で作るものです.

モータドライバの設計は面倒です.マイコンなどの回路は0/1の世界なので,単純で考えることは少ない(たまにノイズとかが問題になる程度)ですが,アナログな回路は考えることがたくさんあります.

とはいっても,微分方程式を真面目に解くなんてことは殆どありませんし,やっていること自体は簡単……なはずですが.

仕様の決定

まず,モータドライバの設計を始めるまえに,どんなモノを作るかを決めます.

機能は,あまり考えることは無いでしょう.正・逆転可能で,PWMが使えることです.モータの逆転がいらない場合は回路が凄く簡単ですが,ロボットではあまり無いでしょう.

タイプ

モータを電流連続モードで駆動するのか,電流不連続モードで駆動するのかとか,モータドライバのタイプも色々あります.

動作電圧

まず,電圧です.これは使うモータやバッテリー事情に合わせて決めます.

ロボコン目的なら 7.2V x 2 = 14.4Vが定番っぽいでしょう.ルール上は24Vまでなので,もっと高くできます.

電流

モータのデータシートを見て,最大何A流れるのか調べてください.自動で動くロボットは,他のロボットや障害物との接触などによって,モータがロックしてしまうことが多々あります.なので,モータをロックした場合の最大電流を流せるべきです.

スイッチング性能

PWMで制御することになると思いますが,PWMの周波数が低すぎるとモータが振動してしまいます.振動するとPWM周波数の音が出るのですぐ分かります.

PWMの周期をモータの時定数以下にする必要があります.

FETの選定

FETの選定時に

  1. ドレイン-ソース間電圧
  2. ON抵抗
  3. 電流
  4. 入力容量
  5. 電力損失
  6. 絶対最大温度
  7. 値段

ドレイン-ソース間電圧

FETにかかる電圧がこれを超えるとFETは破壊されます.あたりまえですが,電源電圧やモータ等のノイズに耐えられる必要があります.

電源電圧の3~4倍程度にする必要があります.

というわけで,ロボコン目的なら40V以上は必要.

ON抵抗

電流よりもまず見るのがON抵抗です.ON抵抗の大きいFETはモータドライバには使えません.

0.1Ω程度のものを探しましょう.

電流

次に,重要なのが電流.最近は,高性能なMOS-FETがたくさんあるのですが,電流以外の要素も考えると選択肢は意外と少ない.

入力容量

FETは電圧で動作しますが,ONにする瞬間には少量の電流が流れます.ゲート・ソース間に見えないコンデンサが入っていると考えればいいです.これはスイッチング性能に対して重要になります.ゲートを駆動する回路のインピーダンスが高いと,電圧をかけてからの反応が遅れます.

たとえば,10KHzのPWMで10%のデューティ比の場合を考えるなら,パルスの幅は10μsです.たとえば入力容量の充電に5μ秒かかったとしたら,デューティ比は本来の半分になってしまいます.

2005年のロボコンで作ったモータドライバはここで失敗.思ったより入力容量の影響が大きくて,大きな電流を流せるようにしたら,ゲート駆動用のチャージポンプのトランジスタが発熱しました.

電力損失

どれだけ電力が無駄になるかです.ON抵抗からも大体わかります.

絶対最大温度

上記の失われた電力は全て熱に変わります.ある程度の放熱をしないと最大温度を超えてしまう可能性があります.

値段

FETは高価な上,たくさん使うので値段も重要です.場合によってはもっと上の方に入るでしょう.

いくら性能が良くても一個千円以上のものはちょっと…….

フォトカプラの選定

モータは盛大にノイズを発生させるので,マイコンの回路と絶縁する必要があります.モータのノイズで,マイコンがリセットされるようなことがあったら洒落になりません.

PWMの信号を入れるフォトカプラは高速にスイッチングできる必要があります.高速なフォトカプラは高いので,それ以外は低速でもOKだと思います.

入力側のLEDが意外と電流を食います.10mA以上流さないと光速にON/OFFできません.

2005年のロボコンでは,マイコン側の回路で一番電流を食ってたのが実はフォトカプラだったりしました.あまりにも電流が流れて,電池が消耗してくると,モータドライバのフォトカプラを駆動した瞬間に電圧が下がってマイコンがリセット……なんて問題もありました.PWM以外の電流制限用の抵抗を大きくしてとりあえずの対処.

FET駆動部

大部分がデジタルな回路です.モータのノイズなども入ってきますから,なるべく電気的に頑丈に作りましょう.とはいっても,あまり考えなくても大丈夫でしたが.

デッドタイム

単純に,FETを同時にON/OFFしていると,Hブリッジの上下段両方のFETが両方ともONになり貫通電流が流れる瞬間があります.ほんの一瞬ですが,大電流が流れるので,FETが燃える可能性があります.

ONにするときのPWMの波形を遅らせて同時にONにならないようにデッドタイムを入れる必要があります.

PWMでスイッチングするのを下段だけにすれば,解決できますが,モータドライバの仕様によっては無理な場合もあります.

Nch-FETの駆動

Nch-FETはソースよりもある程度高い電圧をゲートに加える必要があります.ここで問題なのが電源側のFET.ドレインは電源に直結しているので,ONになっているときは,ソースの電圧は電源電圧と等しくなります.

つまり,ONにするためには電源電圧より高い電圧が必要になります.

チャージポンプ.

コンデンサの充放電を繰り返して電圧を倍にします.流せる電流は普通100mA以下です.

コンデンサの充放電を繰り返すために,トランジスタをON/OFFしますが,その信号の生成に4093が便利です.データシートを見ると18Vまでで動作するので,電源をそのまま使えたりします.

ブートストラップ

下段のFETをONするときにコンデンサを充電して高電圧を得る方法です.

定期的に下段のFETがONしないと動作しません.

基板

モータドライバはいくつも作るので,基板をエッチングして作ったほうがいいです.

電流がたくさん流れる部分のパターンは2mmくらいは必要でしょう.細いと基板が発熱します.

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